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北海道テレビ放送
プロデューサー
平尾由佳子さん
「テレビ局を志望したい」と思ったキッカケ
子どものころ、ウッチャンナンチャン、ダウンタウンなどのコント番組の裏側で笑い声が入るのを聞いて、笑いながらお金がもらえるなんて最高だなと。ドラマも好きで、とにかくテレビが大好きだったんです。小樽の大学で活動していたマンドリンサークルが3年の冬まで公演活動などで忙しくて、キー局の就職活動にウッカリ間に合わず、地元のローカル局や新聞社を受けました。
営業で学んだ
学生の時はテレビ局は番組を作るところだと思っていたので、最初営業局に配属されてションボリしたところもありました。でも当時の上司が新進気鋭のイベントを次々と立ち上げる人で、自分も間近で関わらせてもらいました。例えば雪祭りの大通会場に巨大ジャンプ台を設置して開催したスノーボードのストレートジャンプ大会では、会場内に設置する広告物の企画、現場での大会進行などにも携わりました。貴重な体験でした。普段接することのないプロのスノーボーダーの皆さんともお近づきになれましたし、イベント運営というイレギュラーなことに対応することも学びました。
情報部に異動して夕方ワイド「イチオシ!」のディレクターになりました。営業とは仕事内容が違いすぎて、会社が変わったと思うぐらいでした。情報部は編集マンがいないので、構成台本、ロケ演出(時に撮影も)、編集まで全ての工程をひとりで行います。異動当初は編集機の使い方が分からず7秒つなぐだけで2時間かかったこともありましたが、コーナーのVTRを一から十まで全部自分が考えて作ってそれが放送されるのは、自分の子どもを見てもらうようなもので本当にうれしかったし、毎日毎日の生番組なので荒削りのままでもやりたいことを全部やらせてもらえる環境だったのも成長に繋がりました。
バカバカしいことを真剣に
異動になってすぐ40周年特番のADも担当しました。大泉洋さんらの「TEAM NACS」が札幌ドームから30時間生放送する番組で、右も左も分からない状態で体験したので、テレビ局の過酷さを味わいました。信じられないぐらい大変でしたが、バカバカしいことを真剣につくるという面白さを知りました。
若手スタッフを中心とした斬新な企画を形にして放送するプロジェクト「深夜開拓魂」では、フェイクドキュメンタリーを企画しました。パンダの着ぐるみを着た伝説の万引きGメン(勿論架空です)に密着したり、「うどんがのどに詰まる危険性がある」のでうどん禁止を国が検討しているという設定で、香川県のうどん協会の人にコメントをもらったり、バカバカしいけど真剣に作りました。視聴者から「本当だと思った」という苦情が来て、ものすごく怒られたんですが,作って悔いなし!こんなことができるのも地方局ならではだと思います。
視聴率は低くても最高傑作
TEAM NACSのバラエティー「ハナタレナックス」では、オナラでベートーベンを奏でるという企画を担当しました。坂本龍一さんとかがレコーディングするスタジオを借りて、ウン億円の機材の前でメンバーが「運命」の曲に必要な音階のおならをするんです。元々みなさん自他ともに認める放屁集団だったこともあり見事に演奏に成功しまして、出演者・スタッフ一同大爆笑でした。番組冒頭に「不快な思いをさせるかも」というお断りをいれたのですが、見る人を選ぶ企画だったのか視聴率はそれほどでもありませんでしたね(苦笑)。ただ代表作といってもいいと思いますし、大泉さんも印象的だったのか著書でもしっかり“ボヤいて”いただいてました。
TEAM NACSに続く人気者をつくるという壮大な野望を持ったバラエティー「平岸我楽多団」では様々な出演者が出て、ドキュメントバラエティやコント、ドラマまで毎週色々なジャンルの企画をやってきました。その後プロデューサーになって新たな方向性で組み立てるということで、「夜のお楽しみ寝落ちちゃん」を立ち上げました。初回は札幌ドームを借り切っての深夜の生放送。グラウンドに布団を敷いて、誰が最初に寝落ちするかを競うという企画でした。視聴者のツイッターの反応数によって、「ヘビーメタルバンドの生演奏を聴かされる」「生きている鷹が顔面スレスレを飛翔する」などの妨害が発動されるんですが、翌日北海道日本ハムファイターズの有名選手の引退試合があるということで鷹が飛んでいったっきり戻ってこなかったら大変だなと。が、そこは北海道のおおらかさで(?)各所ふんわり許していただきました。これも視聴率がいまいちだったのが残念でしたが……。
着飾らずに視聴者に素を見せられる
「水曜どうでしょう」などで、先輩たちがひどいことをさんざんやり尽くしてくれたので、空振りばっかりですが、思いっきりバカなことをやっても、視聴者がツイッターで「これがHTBだ」とフォローしてくれるんです。見ている人との距離が非常に近い。スタッフの名前を覚えてもらったり、近くに寄ったからといってスタッフにお土産をもらえたり。「番組のアイデアが出ない」とツイキャスで視聴者から意見を聴いて企画を考えたこともあります。着飾らずに素を見せることができるんですね。予算がないので着飾りようがないというところもありますが(笑)。
皆さんへのメッセージ
テレビの仕事って間口が広いんです。バカバカしいことに命をかける制作部みたいな部署は勿論、真面目に社会を変えたいという人には報道が、ほかにも営業や編成や事業部などさまざまな仕事があるので、みなさんの希望がどこかかなうと思います。大学の延長みたいな感じで入ってきてちょっと違ったなと思ったとしても、いろいろな仕事があって必ず居場所が見つかると思います。人生の大部分は仕事。嫌々仕事していたら人生台無しなんで、受け入れ態勢の広いテレビ局はお得だと思います。
プロフィール
1982年、江別市出身。2005年入社、営業局で3年を過ごし、情報部に異動。情報生番組「イチオシ!」を担当。制作部ではバラエティー「深夜開拓魂」や「ハナタレナックス」でディレクターを務め、「平岸我楽多団」「夜のお楽しみ寝落ちちゃん」でプロデューサー兼ディレクター。2019年春から「イチオシ!!」のチーフディレクターに。キャスティングプロデューサーを担当したドラマ「チャンネルはそのまま!」で2019年日本民間放送連盟賞「番組部門」テレビドラマ番組で「最優秀」。同年、ディレクターとして制作した特別クロージング「南平岸最後の放送50年間の感謝と別れの想いをこめて...」(2018年放送、英語字幕版)がドイツ・ハンブルグで開かれたテレビ番組国際コンクール「ワールドメディアフェスティバル2019」でニュース部門銀賞を受賞。