番組制作者の声
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新潟放送
プロデューサー兼ディレクター
内藤亜沙美さん
「テレビ局を志望したい」と思ったキッカケ
特にテレビ局志望ということではなくて、とにかく楽しい仕事をということで、エンターテイメントに関係する仕事がしたかったです。そこでテレビ局とかマスコミだけでなく、テーマパークの採用試験も受けたりする中で、地元のテレビ局が募集しているというのを聞いて、BSN新潟放送を受けました。ラジオが好きだったということもあって、BSN新潟放送はラジオ兼営局だったということもあります。
入社して感じた地方局の醍醐味
入社してすぐに土曜朝の情報番組「ウイークエンドi」でグルメや旅のロケから編集まで全部担当しました。とても忙しい日々を送りましたが、テレビで流れるものを自分一人で手がけられるのは面白かった。これは地方局の醍醐味だと思います。
入社して、周りの人たちが本当に個性的で、金髪の人や、いつも笑って仕事している人とか、ほかでは見たことがないような人ばかりでした。そんな中で何とか自分の個性を出さねばと思い、食べることが好きだったので、とにかくたくさん食べることを心掛けました。ロケで出されたものは全部残さず食べるようにしました(笑い)。
その後、月〜金曜日の夕方ワイド番組「イブニング王国!」とゴールデンタイムのバラエティ番組「水曜見ナイト」を担当し、そこで商店街を歩く「まちかど行ってみずほ」というコーナーに10年ほど携わりました。魅力的な方や知られざる名物グルメをたくさん発見し、新潟の素敵さは掘り起こせばまだまだいくらでもあると感じました。この企画はBSN新潟放送の名物コーナーとなっています。ここで知り合った食堂のおばちゃんに今でもおかずをいただいたり、家族的な付き合いをしてもらっています。
ドキュメンタリー番組で人に学ぶ
地方局には、ドキュメンタリー番組の制作に取り組みやすい環境があり、通常の仕事をしながらドキュメンタリーの取材もしていました。最初は2007年に地元で民間天文台を作っている方のドキュメンタリーを手がけました。山小屋に泊まったり、ドラム缶のお風呂に入ったり、とにかく人の懐に入らないといけないと思ってがんばりました。そんな中でぽろっと本音がでて、普段は見せない涙を見せたりしてくれると手応えを感じました。
中でも情熱を注いだ仕事が、独自の水草レイアウトスタイルで世界的に知られるネイチャーアクアリウムのクリエイターで、ネイチャーフォトグラファーでもある天野尚さんのドキュメンタリーです。天然杉を撮りに山の中に入るなど、長年追っかけさせていただきました。2015年にポルトガルのリスボンで40メートルの水槽をつくるという依頼が来たんですが、その時既に天野さんは病気で余命宣告を受けていたんです。30人のスタッフを従えてリスボンに渡り、病を押して水槽づくりをする鬼気迫る姿を見ました。その中で私にだけ本音を語ってくれたこともあって、最後に命を燃やす姿を映像として残せたのは本当に素晴らしい仕事ができたと思います。天野さん自身写真家というクリエイターなので、スタッフが気を抜いていると怒られたり、仲良くなるために一緒にお酒を飲んだり、懐に入るのも大変でしたが、こんな方に近くで学ばせてもらえるのはテレビの仕事ならではだと思います。
番組づくりで叶った夢
「水曜見ナイト」の最初のプロデューサーもドキュメンタリーに力を入れていたので、「グルメだけでなく、人間を撮影してこい。人を描くことでグルメのおいしさを伝えるんだ」と言われました。番組も「新潟の元気を伝え、元気を生み出す」がコンセプトだったので、単なるグルメレポートだけない手法で描けたと思います。
忘れられないというか、夢が叶ったというのが、高校生のころから憧れだったロックバンド「Hi-STANDARD」の難波章浩さんが新潟在住で、偶然プロモーションで知り合ったので、番組で特集をしたいとオファーして受けていただいたんです。新潟にこんなすごいアーティストが住んでいるということが、新潟ではあまり知られていなかったので、難波さんが新潟に住んでいる思いを伝えるという特集をつくりました。ご本人も喜んでいただいて、その後ラーメンを食べたり、お勧めのグルメを紹介してもらったり、何度か出演していただきました。憧れの難波さんがカツ丼を食べる姿を見られるなんて、夢のようでした。テレビで仕事をしていなければこんな思いはできませんでしたね。
「水曜見ナイト」はアナウンサーや地元のタレントさんが中心だったのですが、今年から全国で活躍している芸人さんに出演していただいて、番組を盛り上げてもらうようにモデルチェンジしました。漫才コンビのナイツさんとか、「ジャングルポケット」の斉藤慎二さん、YouTuberとして人気のカジサックさんたちに出演していただきましたが、一流芸人の方々の力を目の当たりにして驚きました。カジサックさんの出演者へのコメントなどは本当に勉強になりました。
結婚、出産を経て
2014年に社内結婚をして、2018年3月から2019年の4月まで産休・育休を取りました。休むことに正直不安はありましたが、復帰後は、番組のプロデューサーという立場になりました。プロデューサーといっても4人で作っている番組なので、制作にも関わりますが、出演者のブッキングや台本のチェックなどディレクターに比べて編集などの作業は減るので、子育てを配慮していただいています。本当にありがたいと思っています。出産・子育ての経験は「生活者の視点」を持つことができて、時間の使い方も変わり、番組作りにも役立っています。
皆さんへのメッセージ
ネットの時代でYouTubeなどもありますが、災害のときは、県民の命を守る一助になることができるし、疲れた視聴者を癒やしたり、つらいときに笑わせてあげられたり、テレビ・ラジオというのは人の生活に寄り添えるメディアだと思っています。ぜひそんなテレビ・ラジオを好きになってほしいと思います。
プロフィール
1981年、新潟県長岡市出身。2004年に入社し、土曜朝の情報番組「ウイークエンドi」を担当。その後、月〜金曜日の夕方ワイド番組「イブニング王国!」のディレクターを務め、2010年に新潟発のゴールデン番組「THE新潟スペシャル」、2011年に後継番組「水曜見ナイト」のディレクターに。2018年に出産・育児休暇を取得し、2019年から同番組のプロデューサーを務めている。 ほかに多くのドキュメンタリー番組を手がけ、「原始の森から未来へ~写真家・天野尚の眼~」(2009年)でJNNネットワーク協議会賞(環境・エコ部門)優秀賞。「長岡花火のキセキ ~白菊とフェニックス~」(2015年)でJNNネットワーク協議会賞大賞。「ガラスの中の夢たち 自然クリエイター天野尚が遺したもの」(2015年)でJNNネットワーク協議会賞(地域・環境部門)奨励賞。「俺は工場の鉄学者」(2016年)で日本民間放送連盟賞「優秀」。