番組制作者の声

毎日放送
制作局制作部
松下莉子さん

2024.10.31 thu

― 就活の第一志望は教育業界

大学では、外国語学部で日本語教育を専攻していました。はじめの2年間は現地の言葉を集中的に勉強し、残りはその言葉を使って外国人へ日本語をどのように教えたらいいかを学びました。私は大学でポルトガル語を学んだ後、ブラジルで現地の人々に日本語を教えていました。この頃は教育関連の仕事に興味があり、就職活動も教育系が中心でICT教材を作っている会社に入るつもりでした。ただ、子どもの頃からテレビもよく見ていたので、放送局に憧れがあり複数のテレビ局も受けました。

― MBSを選んだ理由

関西の放送局をいくつか受けましたが、毎日放送(MBS)の内定が最初に出たので、縁だと感じ入社を決めました。実家ではMBSにチャンネルが合わせられていることが多く、特に「ちちんぷいぷい」という番組を幼稚園の頃からよく見ていたので、思い入れはありました。

― 放送局の面接にあたり準備したこと

大学時代は新聞やニュースに触れる機会があまりなかったので、時事関連を面接で聞かれるはずだと思い、急いでニュースの勉強をしました。ところがそんな質問は全くなく、日本語を教えに行っていたブラジルでの経験について何度も聞かれました(笑)。就職活動では「何かひとつ、自分の強みを持っておいた方がいい」とよく言われますが、私にとってはブラジルでの経験がそれだったのかもしれません。結果的に大きなアピールポイントになりました。

― 面接ではブラジルトーク一本

ブラジルでのあの楽しい日々が忘れられないという経験談を中心に話しました。ブラジルの人たちはとても開放的で、誰も他人の目を気にしません。たとえば、どんなに体がふくよかでも、ボタンがはち切れて飛んでいきそうな服を着ています。私も現地で、日本では絶対履かないショートパンツを履いていました(笑)。ブラジルは異文化を持つ外国人でもすぐに溶け込める場所で、実際私も現地の方に間違われ、道を聞かれることがよくありました。他の国にも良いところがいっぱいあると思いますが、私にとってブラジル以上の国はありません。そんな話ばかりで、面接の時間は過ぎていきました。

― 入社1年目で制作部へ 柔軟な職場に驚き

制作への配属は希望していましたが、厳しい現場だと思っていました。
実際に入ってみると、他の業種で働く友人より勤務時間は長かったのですが、思ったよりも放任されている部分がありました。悪くいえばいつでもサボろうと思えば簡単にサボれそうな緩さ(笑)。周りのスタッフの考えもすごくフレキシブルで、自分の意見を積極的に出せば、すぐに反映される環境でした。
例えば、編集などを行うポスプロ作業の場所と制作フロアの行き来の時間が無駄だと指摘すると、ポスプロと制作フロアをつなぐ回線をひきサーバーを設置してくれました。意外と柔軟に動いてくれる会社の対応にビックリしました(笑)。あと、放送局で働く人ってもっとクセのある人たちばかりだと思っていたのですが、思ったより普通の人が多くビックリしました。アイデアがポンポン浮かぶ天才的な人よりは、コツコツ真面目に目の前にある仕事をこなす人のほうが多いです。自分でも頑張ればチャンスはあるかもと思えました。

― 番組を作るという喜びを1年目から実感

まずは、子どもの頃から親しみのあったゴールデンタイムに放送される料理番組「魔法のレストラン」の担当になりました。新米ADなのにいきなりカメラを渡され、街頭インタビューや店舗の撮影を任されました。ディレクターの仕事だと思っていたこのような作業を、ADが担うことに最初は驚きもありましたが、その分早い段階で自分が撮った映像がテレビで放送され、とても興奮したのを覚えています。
「魔法のレストラン」では、2年目からプロのシェフが料理を作るキッチンコーナーのディレクターを担当しました。シェフとレシピを考えたり、視聴者が楽しく見られる構成を考えたりする経験は、非常に新鮮でとても楽しかったです。

1年目からカメラを持って街頭インタビュー

― 土曜日の人気番組「せやねん!」に担当変更

3年目、料理番組から一変、芸人さんとガッチリとタッグを組む「せやねん!」のディレクターになりました。千鳥さん、かまいたちさんなども輩出したコーナーなので、プレッシャーも大きいです。悩むことが多いですが、芸人さんは台本通りというよりその場のアドリブに全力投球されるので、柔軟に対応する力が求められます。やり取りに苦労することもありますが、芸人さんのアイデアが随時入ることで、想像以上の面白さが生み出されます。とてもいい経験をさせていただいています。

新担当「せやねん!」でのロケ

― 入社3年目で、初企画演出が実現!

オードリー春日俊彰さんに、テレビ局のADを体験して頂く「下っ端春日」という番組ではじめて演出を経験しました。企画募集があったので、私がAD時代に経験したことを元に企画を考え、応募したところ採用されました。
AD時代に多くのディレクターの編集スタイルを観察してきた中で、VTRは編集する人によって、同じ素材でも面白さが劇的に変わることに感銘を受けました。当初は編集に特化した企画として提出しましたが、それだけだと広がりのない作品になりそうだったので、制作部の先輩であるプロデューサーと相談し、ADの仕事全般を取り上げる形にブラッシュアップしました。
最終的には、自分がはじめて番組制作に関わったときの感動を、春日さんを通して視聴者の方に伝えられたと思っています。「下っ端春日」は春日さんの人気もあり、TVerでもたくさんの方々に見ていただきました。関西だけでなく全国の方にも見ていただけて大きな励みになりました。

― 放送業界を目指すあなたへ

放送局では、何かに特化した強みを持っている人だけでなく、バランスが取れる人など多種多様な人がさまざまな形で活躍しています。
私はまだ制作部しか経験していませんが、他の部署の方と話しているうちに思いもよらないアイデアを聞けたりすることもあり、とても感激しました。そうした繋がりから生まれる学びが、仕事を楽しめている要因にもなっています。他の業種では見られない魅力的な部署が数多くあります。部署異動などを通して様々な分野に関われるのも面白いところだと思います。少しでも興味がある方は、放送局で自分の可能性を広げてみてはいかがでしょうか。

職場はとにかくモノがいっぱいです

プロフィール

奈良県橿原市出身。
外国語学部卒業後、2022年に毎日放送に入社。制作局制作部に配属。
「魔法のレストラン」などを経て、現在は「せやねん!」を担当。
2024年8月にオードリー春日俊彰出演「下っ端春日」を初企画演出。